ひと口飲んだ瞬時、私達を温かく包み込んで、
一気に視界が広がるような「極上の時間」を与えてくれるお茶
目覚めの一杯や仕事中の一息、家族や友人と特別なお茶を一緒に飲む時間など、
お茶の持つ不思議なパワーで安らぎと優しさが体の中にじんわりと浸透していきます。
お茶には、緑茶・紅茶・プーアル茶などたくさんの種類があり、飲み方も千差万別。
どのお茶も茶樹の葉を加工し、お湯を注いで味や香りを楽しみますが、
「お茶は一体どこから始まり、どうやって誕生したのでしょうか?」
キッチンの棚に必ず入っている「お気に入りのお茶」の誕生と、
世界中が注目している「日本茶」のはじまりを丁寧に分かりやすくご紹介します。
■ 世界一やさしい、お茶の神話
約5000年前、狩猟や漁を中心に生活をしていた時代。
中国・湖北省近辺に、山や野をひたすら駆け巡り、誰も口にしたことのない野草や草木を
端から端まで食べていた「神農」は、食べられる植物を人々に教え
生活の知恵を与えていました。
1日に何十種類何百種類の植物を試し、ある日72もの毒にあたり、もがき苦しみます。
息も絶え絶えで死にかけそうになったその時、
目の前にあった爽やかな香りの柔らかい葉を口に入れ、飲み込みました。
それこそが「茶の新芽」です。
茶の新芽は神農の体に入った72もの毒を解毒し、体調は回復、
再び人々のために様々な植物の試食を続け、毒にあたる度に茶の葉で
解毒をして自身を手当していったと言われています。
それ以来、茶の葉は人々の命を守る「薬草」となり生活に浸透していきました。
茶の専門書「茶経」など多くの古文書に残っている神農の伝説は、
現在の私達の生活に引き継がれています。
神農の体の毒を払い、奇跡の回復に導いた茶の葉ですが、
「薬草」から「日常の飲み物」に変化するまで数千年の時間がかかります。
■ 中国から日本へ、日本茶のはじまり
中国で茶は薬から始まり、
人々が茶葉を煮出して飲みだしたのは、約2000年以上前のこと。
その頃、日本には茶の存在すらありませんでしたが、800年代初頭に中国
の王朝である唐の元で喫茶法を学んだ僧侶が、天皇にお茶を煎じておもて
なしをしたのが最も古い日本茶の歴史と「日本後紀」に残されています。
当時の嵯峨天皇(さがてんのう)はお茶をとても気に入り、
その年から日本で茶の栽培をし、毎年、天皇家に献上するように命じます。
ここからが、日本茶のはじまりです。
800年代当時のお茶は、「蒸して餅状に丸め、飲みたい時にちぎって、
塩を加え釜で煎じる」という飲み方が中国から伝わってきましたが、
日本人の好みには合わず普及しませんでした。
そのため、「茶の生葉を蒸して乾燥させるだけ」で飲みたい時に煎じる方法
に自然と変化していったと言われています。
時代は200年近く進み、1191年、はじめて日本国民にお茶の飲み方や効能を
伝えた栄西禅師(えいさいぜんし)が中国で流行していた抹茶法を伝授し、
京都や鎌倉へと広がっていきます。
この抹茶法から、日本茶の最高峰「茶の湯」へつながり、大きく発展していきます。
高徳な僧路から抹茶法が日本に伝わり、茶道「茶の湯」へどのように発展していったのか?
次の「一期一会の茶会 - 込められている本当の想いとは?」では、
茶の湯や煎茶についてお伝えします。